人の話を聞くのと、言うことを聞くのは違う

話し合い、共有が大切!と書いてきました。
そこで、人の話を聞く、ということがどういうことか考えていきたいと思います。

 

 

 目次

 

 

聴覚からの情報が理解できない理由

視覚優位の特性を持っているアスペルガー高機能自閉症は、聴覚からの情報を取り入れることが困難です。耳からの音情報がうまく理解できないのはなぜなのか。まずは、その点を掘り下げていきたいと思います。

 

1.五感の過敏性

聴覚だけではなく、触覚や嗅覚、味覚など。五感における何らかの過敏反応、もしくは鈍感な部分があります。人によって症状は様々です。

私の場合は、聴覚過敏であり、触覚過敏です。大きすぎる音は吐いてしまいます。また、少しでも皮膚をつままれると、とても痛く感じます。

これは、外界の刺激に対して過剰に反応しまい、起こります。

 

2.選択的注意の欠陥

普通、人ごみの中でも、話している相手の声など聞き取ることができます。これは、話している相手の声にフォーカス(焦点)を当てて会話をしているからです。この、フォーカスする機能が弱いため、こだわりが強かったり、混乱してしまうことがあります。

視覚情報や聴覚情報など、全てが均等に入ってきてしまいます。そうすると、情報の荒波に溺れてしまい、大切な情報がはいってこなくなります。

 

3.中枢性結合の弱さ

中枢性結合とは、細かい部分だけをみて、全体を把握する能力です。スケジュールを立てたりするときは、全体を見た上で、細かい日程を詰めていきます。この、全体を見るということができません。また、細かいところにだけ焦点を当ててしまい、それらを組み合わせたときに全体がどのようになるのかわかりません。

これは、話が点と点で繋がっていないといことが起きる原因です。

 

上記3点の理由から、話を聞き取って理解するということが困難であると感じます。

よって、話し合いをするときなどは目に見える形で行うと円滑に進むのではないかと思います。

具体的な方法はTEACCHプログラムに書きました。

 

記憶するのではなく、記録してしまう

そこで、普段私がどのように人の話を聞いているのか紹介したいと思います。常時やっているわけではなく、これは大切な場面だなと思ったり、相手が大事なことを話しているなと感じるときにやっています。

 

聴覚情報を頭のノートに書きだす

耳から入ってきた見えない情報が理解できないのなら、自分で見えるようにすればいいじゃないか!と思って始めました。

しゃべると同時に、字幕のように頭の中で文字変換してしまうことにしています。

 

例えば

母:今日は雨が降りそうだから窓を閉めておいて欲しい。

私:私は今日出かけるから、窓閉めるのは難しいよ。

母:じゃあ、紫根が出かける前に、窓を閉めてから出かけて欲しい。

私:今日は、母よりも先に出かけると思うよ。

母:そっか、わかったよ。母が閉めてから出かけるね。

私:そのほうがいいね。よろしく。

 

こんな感じでしょうか。

こうやって頭の中で記録するように心がけると、前よりも話が聞きやすくなりました。

補足として、その時の相手の表情なども写真のように貼り付けるとさらに良いと思います。頭のなかに、このブログのような空間を作ってしまうということです。

とても疲れますけど。

 

自分で話に起承転結をつけてしまう

全体を把握するのが苦手なため、細かい部品を組み立てて話の流れを理解するのは困難だと思います。先ほど書いた中枢性結合の弱さの部分のことです。しかし、この機能はデメリットばかりではありません。部分的に焦点が当たってしまうということは、要約する機能は高いと思われます。

つまり、細かい部分を組み立てて全体を把握するのではなく、全体から必要な部分を抜き出して話を聞けば理解できると考えています。

 

例えば…ですけど

母の話

この前、仲のいい友達とご飯に行ってきたの。母と、友1、友2でイタリアン料理を食べてきたわ。そこで、娘の話で盛り上がったのよ。私たちの時は親に口答えなんてしなかったけど、自分の娘はずけずけものを言ってくるっていう話ね。あ、料理はピザとパスタを食べてきたの。パスタは紫根が好きそうなクリームのやつで、ピザはチーズがたっぷりのピザだったわ。でも、娘がずけずけ言ってくるっていいことだと思うのよ。親に言いたいことを言えるっていうのは、幸せなことだし、そういう関係を親と娘の間で結べるってことは、私の子育ても間違っていなかったってことよね。あんたはどう思う?

 

なんて長い話があったとします。

 

ここで、事実を整理しながら話を聞いていくのです。

1.母、友1、友2でイタリアンを食べてきた

2.娘がずけずけ親にものを言うという話題になった

3.親と娘の間でそういう関係を結べたのは子育てとして成功だった

4.私としてはどう感じているのか聞きたい

 

このように、起承転結を自分でつけて話を聞いてしまいます。時には、食べていたピザやパスタの方が大切な話題だったりするときもありますけど(笑)

ただ、混沌として、音情報として話を聞くのではなく、整理して話を聞いているということは不思議と相手にも伝わります。

そのため、「聞いてるの!?」ということが少なくなるのではないかなと思います。

これも、頭の中に議事録があって、それを文字情報として書きだしながら話を聞いています。

疲れますけど。

 

どちらの方法も疲れますが、とても役に立っています。

こうやって頭の中で文字に書き出してみると、自分が理解できていない部分や、相手が話したい部分がどこか考えながら聞くことができます。

あくまで私自身が行っていることです。一番いいのは実際の紙にメモしながら話を聞くのが手っ取り早いと思っています。

 

人の話を聞くのと、言うことを聞くのは違う

これは、母と話していて、そのとおり! と感じた言葉です。

人の話を聞く、意見を聞くというのは確かに大切なことです。しかし、その意見を聞いて判断するのは自分自身であるということです。

人の話を聞く=情報収集 であって

人の言うことを聞く=隷属、行動の放棄 

であると感じます。

もちろん、聞いた意見を取り入れて行動することは大切です。しかし、自分で考えもせず、ただ言われたまま行動することとは、ちょっと違うのではないかと思います。

言葉通りに物事を受けっとってしまう、私のような人間は、この「聞く」と「言うことを聞く」をはき違えていたように思います。

感情や問題、話題を共感できないという部分がこの名言にかかってくると感じるのです。私にとって、人の話というのは、ただの音情報でした。そうではなく、一人一人が発する言葉には感情や伝えたいことが詰まっているのだから、聞く側も考えながら聞くべきかなと思っています。

最後に、

相手の言っていることを正しいかそうでないか。これを判断できるようになったら大人になった証拠だね。

という、母の言葉を残しておきます。