私が行っている「翻訳」について
最近「ASDバイリンガル」と定型・ASDの両側からお褒めの言葉をいただきました。とても嬉しく思います。
さて、前回は「言語」と「翻訳」について書きました。
まだ読んでいない方は「言語」と「翻訳」の記事を読んでいただけると、今回の内容が分かりやすいのではないかと思います。
そこで、私が行っている「翻訳」がどういうものか。体感していただけたらと思い、今回の記事を書き始めています。
ある質問をします。
質問の回答はともかく、こういう質問をされたらどういう印象を抱くか考えてみてください。
《ASD言語》
「ありがとう、ごめんなさい」
なぜ思ってもいないのに、こういう言葉を使って感謝や謝罪をしなければならないのでしょうか?
相手に対して本当はそういう風に思っていないのに「ありがとう、ごめんなさい」を言うことは相手に嘘をついているということになります。
「ありがとう、ごめんなさい」を嘘をついてまで相手に伝えなければならない理由を教えてください。
こういう感じで質問されたらどうでしょう。
正直な気持ちとして「質問の意味がわからん」「答えるのは面倒くさい」というのが印象なのかなと思います。
そこで、この質問をASD言語→定型言語に「翻訳」してみます。
《定型言語》
「ありがとう、ごめんなさい」は
私にとって、とても大切な言葉です。
本当は「ありがとう、ごめんなさい」と思っていないのに、この言葉を言うことは相手に対して嘘をついているようで辛い気持ちになってしまいます。
どうしたら「ありがとう、ごめんなさい」をうまく相手に伝えることができますか?
こういう風に質問されたら意味もわかるし答えてあげたいな、と思いませんか?
どちらも同じ意味の質問をしているのに、全く印象が違いますね。
《ASD言語→定型言語》
変換のポイント
3つほどあると思います。
1.感情の流れ
「こういう言葉」→「嘘」→「理由」の部分を
「大切」→「辛い」→「どうしたらできる?」
という感じで、理論的から感情的に変換しています。
2.どうしたら〇〇できますか?
「どうにかしたい」という気持ちと
「意見・助言」が欲しいという気持ちを汲み取ることができますね。
ASDが苦手とする言葉の裏の意味ですが…
実は、ASD言語では「なぜ、理由、教えて」と見える形で書いてあります。
3.疑問形「?」で柔らかくする
・教えてください。
・〜できますか?
どちらも文章全体を通して見てみると「質問」の意味として使われています。
上の方が圧力を感じますよね。ASDに悪気はないのですが、この圧力に拒否反応を起こしてしまう定型の人が多いので、柔らかく変換しています。
《定型言語→ASD言語》に
変換してみる
ちなみに、この質問に対して定型の皆様はどういう風に答えますか?
定型の師匠である母が今日は不在のため
私の勝手な推論と組み立てになってしまいますが笑
多分、こんな感じで回答されると思います。
《定型言語》
気持ちは口に出して言わないと相手に伝わりません。
また、思っていなくても相手が「ありがとう、ごめんなさい」という言葉をかけてもらうことで救われることがあります。
相手の気持ちに寄り添って「ありがとう、ごめんなさい」を伝えると良いと思います。
至極まっとうな答えですが、ASDには伝わり辛い上に傷ついてしまいます。
私だったらこう答えるという回答はありますが、まずはASDに伝える為のポイントを説明させてください。
《定型言語→ASD言語》
変換のポイント
こちらも3つポイントがあります。
1.否定の言葉を使わない
どこにそんな言葉があるの!?
と思われるかもしれませんが、頭から否定しにかかっています。(そのように聞こえます)
「言わない」と「伝わりません」の部分と
「思っていなくても」の部分ですね。
なので、ここは肯定に変換して
「気持ちは口に出して相手に言うと伝わりやすいですよ」
とする方がいいのと
「思っていなくても」の部分は文章から削ってしまいましょう。
2.感情を含めない
定型の人にはこれが一番難しくて、意味がわからないと思います。
「感情」のように形の見えないものを引用すると、ASDには意味が伝わりにくいんです。
どこの部分かというと
「救われる」と「気持ちに寄り添って」のところです。
そうなると、変換以前に違う視点からのアドバイスが必要になるのでここの文章は丸々変える必要があります。
3.質問の本当の意味を理解する
これが一番難しいです。
この質問の内容を解説してしまうと…
言葉に出して相手に言うことが必要なことは百も承知です。世の中に強制されて「ありがとう、ごめんなさい」を言わなければならないことが腹立たしく、そのようなことをしなければならないことに納得がいかないのです。
なので、この質問の場合はどうしてそんなことをしなければならないのかを回答する必要があります。
私が気を付けていること
定型の皆様には「翻訳」という形でわかりやすく伝えています。
ただ、ASDの皆様に何かを言うときは私としても「当然の気遣い」をしているつもりです。
・否定の言葉を使わない
・抽象的な表現を避ける(具体的に表現する)
・理論的に説明する
・誤解させない
・強制しない
ASD言語→定型言語は「翻訳」機能が未熟ですし
定型言語→ASD言語は上記の「気遣い」がうまくできてないのだと思います。
「ありがとう、ごめんなさい」について回答
にも書きましたが
優しい嘘は相手を喜ばせることができますよ。
それから
という記事には私が「ありがとう、ごめんなさい」のような言葉を使うために納得するまでの経緯が書かれています。
良かったら読んでみてください。
最後に…
いかがだったでしょうか?
お互いスムーズに意思疎通をするためには、かなりの労力が必要ですよね汗
どうやったらこんなことができるようになるの?
と、聞かれると説明することが多くてこんがらがってしまいそうです笑
そのうち、頭の整理がついたら書くかもしれません…
正直データが膨大すぎて整理する自信がありません笑
追記、なんだか違和感があったので補足記事を書きました。
というわけで、今回はここまで。